私がDTPの世界に飛び込むまでの道のり⑦
いよいよ研修がスタートすることになりました。これから怒涛の三カ月が始まります。
研修開始
講師は、私より少し年上の男性でした。全く白紙の人間を相手に、三カ月後にはある程度一人前の仕事ができるところまで教え込まなければならないという使命とプレッシャーを課されていたのか、講義は最初からかなり前のめりの姿勢でした。若干スパルタ気味とも言える雰囲気の中、研修は進められて行くことなります。
印刷の知識が無いのはもちろん、今のようにパソコンやスマホが普及している時代ではなかったので、皆、パソコンの操作そのものですら、おぼつかないありさまでした。学習スケジュールはギュウギュウに詰め込まれ、何がわからないのかもわからないままで、質問をする時間さえも他人の迷惑になるのではないかと感じられました。しかし、研修が終わる頃には頼る人もいなくなってしまうと思うと、解らないところはきっちり解決しておきたいという気持ちもありました。
皆が皆、全く余裕のない状態で、研修は進められていきました。
主な学習内容
印刷物を制作する上での必要な知識と、DTPに使用する主な基本のソフトウェアを中心に学んでいくことになります。
①Adobe Illustrator 5.5J
(アドビ イラストレーター 5.5J)Adobe社が販売しているグラフィックデザインツールです。今に比べて機能はかなりシンプルでした。新規ファイルの作成・保存から始まり、図形やテキストの配置、画像や写真の読み込みなどIllustratorの基本操作を学習しました。ベジェ曲線を扱えるようになるまでしばらく時間がかかりましたが、次々と新しいことを知ることは非常に新鮮で、刺激的な気持ちだったのを覚えています。
失敗を繰り返し悪戦苦闘の日々でしたが、楽しく毎日があっという間でした。この特訓で習得したことは、この後大いに活かされることになります。
②Adobe Photoshop 4.0J
(アドビ フォトショップ 4.0J)Adobe社が販売している画像編集ツールです。こちらも同じく今と比べ機能はシンプルなものでした。色調補正の設定を記録させておくことができる『調整レイヤー』や、一連の操作を記録し複数のファイルに適用する『アクション&バッチ機能』が、このバージョンで新しく追加され、次々と実行される画面を皆で関心しながら眺めていたのを思い出します。
アプリケーションの基本操作に加え、画像解像度の知識や製版業務に欠かせない色調やコントラスト調整などレタッチのノウハウに付いては、この時、多くの時間があてられていました。また画像の切り抜き作業については、『いかに早く美しく見えるか』がポイントで、そのコツも教わることができました。ここでもベジェ曲線に奮闘することになりますが、この後切り抜きソフトが導入され、ものの数分でパセリや白菜が綺麗に切り抜かれることに感動したことを覚えています。
③QuarkXPress
(クォーク・エクスプレス)Quark社が販売している組版・ページレイアウトソフトです。現在はレイアウトなどの作業を行う上で、Adobe社のInDesign(インデザイン)がその中心になっていますが、かつてDTPソフトと言えばコレ!と言われるほど圧倒的シェアを誇っていました。
研修ではIllustratorとPhotoshopに多くの時間を費やしたため、QuarkXPressは研修最後の一週間で走り抜けるような速さで学ぶことになりました。実際QuarkXPressの現場での使用は、IllustratorやPhotoshopのデータを貼り付け、出力用のパソコンへ転送するというのが主な使用目的でした。そのため、ある程度決められた操作方法さえ習得できていれば作業に問題はありませんでした。
後々、カタログなどページ物を作成するにあたり、詳しい操作方法は必要に迫られて、その都度学習することになります。
④RENATUS
(レナトス)
大日本スクリーン製の印刷製版システムです。印刷機で使用する刷版の元となる、透明フィルムを出力するシステムです。夢のような画期的な製版システムとして脚光を浴び、当時の価格で数億円とも言われていました。その後、CTPの導入に伴い、True flowというシステムに変わっていきました。
ここで、品質の高い印刷物を作成する為に必要な「ノセ」「ヌキ」「トラッピング処理」などの製版の基礎を学びました。
研修を終えて
自分のやりたかったこと望んでいた学習を、お給料をいただきながら学ばせていただくことができ、今となっては本当に感謝しかありません。同僚達とは知らず知らずのうちに打ち解けていきましたが、この頃プライベートな話をしたり食事に行くようなことは一切なく、ただただ出勤して学んで帰宅するを繰り返すDTP一色の毎日でした。
そして日曜日のDTPスクールは、途中で退学することに。三カ月間の研修で、中級コースの途中以降は必要がなくなったためです。
私はここから10年間、この会社で様々なことを経験することになります。